口内細菌によって継続的な炎症を起こす疾患です。原因菌はプラーク(歯垢)や歯石に潜んで増殖します。歯周病で痛みなどの自覚症状を起こすのは、ある程度進行して歯肉や顎の骨にダメージが広がってからです。初期の段階では症状が起こりませんので、放置して進行させてしまう方が多く、歯を失う最大の原因になっています。
歯槽膿漏
「歯肉炎」
歯茎のみに炎症が起きている状態で、それ以外の組織への破壊はまだ起こっておらず、歯周病の前段階です。歯茎の腫れや赤みがあり、歯磨きやフロスなどを使った際に出血することがあります。歯歯周ポケットの深さは2~3㎜程度です。
歯肉炎の段階であれば、正しい歯磨きなどの適切なセルフケアを続け、定期的に歯科受診して歯石除去を受けることで正常な状態に戻せます。
中等度の歯槽膿漏
「歯周炎」
歯肉炎からさらに細菌の感染による炎症が進んだ状態です。歯周炎から先の状態が「歯周病」と呼ばれます。
歯と歯茎の間の組織が破壊され、歯を支える骨の吸収も少しずつ進んでいきます。歯周ポケットは3㎜以上になります。歯茎が痩せて下がり、歯が長くなったように見えます。口臭などの症状も起こりはじめます。
重度の歯槽膿漏
炎症がさらに進行すると組織の破壊が加速し、歯周ポケットは4~6㎜以上になります。
歯を支えている骨も1/3〜1/2以上吸収されてしまい、歯がぐらつきます。放置していると最終的には虫歯もない健康な歯が次々に抜けてしまいます。
歯周病菌は、初期段階では歯面のプラーク(歯垢)や歯石などで増殖しますが、進行すると深さを増した歯周ポケット内で増殖します。深い歯周ポケットの奥はセルフケアでは手入れが難しく、増殖スピードが加速します。
歯周ポケットの奥で増殖した歯周病菌は、歯茎にある血管を通じて血流に入り込み、全身へと広がって、さまざまな疾患の発症に大きく関わることがわかってきています。その中でも代表的な存在が血管障害である心筋梗塞や脳卒中です。血管に入り込んだ歯周病菌は血管に大きなダメージを与え、動脈硬化を進行させて、血管の閉塞や狭窄のリスクになります。
歯周病は、歯を失う病気というだけでなく、全身の状態を悪化させて命の危険にもつながる深刻な疾患のリスクになってしまうのです。
歯周病があるということは、口内に炎症を起こす原因菌がたくさん生息しているということです。食事をすると、そうした多くの原因菌も一緒に飲み込んでしまいます。胃には細菌を死滅させる強力な胃酸がありますので問題がありませんが、飲み込んだものが誤って気管や肺などに入ってしまうとそこで感染して増殖し、誤嚥性肺炎を発症する危険性が高くなります。高齢になると歯周病が進行し、嚥下能力が下がって誤嚥性肺炎を発症しやすく、命に関わることも珍しくありません。嚥下能力や口腔内の良好な環境を維持することで誤嚥性肺炎リスクを下げることができますので、歯周病の治療や丁寧な歯磨きなどの口腔ケアで口内の細菌を減らしましょう。
歯周病治療は、原因となっている細菌を除去することが基本になります。歯周病の前段階である歯肉炎や初期の歯周病の場合、歯石の除去や正しいブラッシングを覚えて日々のセルフケアを丁寧に行うことが治療の中心になりますが、進行して歯周ポケットが深くなってしまうと歯肉を切開する外科的な治療が必要です。
日々の歯磨きは、正しいブラッシングを覚えることで口内の細菌を効果的に減らせるようになります。利き手や癖などがありますので、ブラッシングで注意するポイントは患者さまごとに違います。当院では患者さまとしっかりコミュニケーションをとりながら適切な歯の磨き方を丁寧にご指導行い、また歯間ブラシやフロスの使い方もわかりやすくお伝えしています。
セルフケアをしっかり行えるようになれば歯周病や虫歯のリスクも減少し、健康な歯と歯茎を守り、食事や会話を将来的にも心置きなく楽しめるようにしましょう。
歯石は、プラーク(歯垢)が石灰化して固まり、歯の表面に付着している状態です。歯石には大量の細菌が生息していて、歯磨きでは除去できません。歯石は歯科を受診して、専用の器具で除去する必要があります。
歯石には、歯肉よりも上にある縁上歯石、歯肉の下に隠れている縁下歯石があります。歯周ポケットが深くなって縁下歯石が歯根表面に付着したものは直接観察できないので、専用の器具を使った除去が必要です。
詰め物や被せ物といった修復物と歯の間に段差などができてしまうと、そこに付着したプラーク(歯垢)はブラッシングで除去するのが難しいので、歯石がたまりやすい傾向があります。特に、被せ物や詰め物がしっかり合っていないことで段差ができることが多くなっています。こうした場合には、修復物の修正やつくり直すことで段差などをなくす必要があります。
歯周病治療の基本はブラッシングによるプラークコントロールと歯石の除去ですが、噛み合わせも歯周病の進行に大きく関わる場合があります。噛み合わせで特定の歯に大きな負担がかかると歯周病が悪化することがあります。噛み合わせの調整は、歯周病の悪化リスク低下に役立ちます。
歯石を除去するなどの基本治療後は、患者さまのプラークコントロール状況、歯肉の状態を歯科医師が丁寧に確認し、再び歯周ポケットの深さを測ります。ブラッシングが正しくできていて、歯周ポケットが浅く、歯肉状態が良好な場合、以降は定期的な検診を受けるメンテナンスとなります。
プラークコントロールに問題がある場合には、患者さまに合うブラッシング方法を一緒に探しながらご指導して正しいブラッシングを身に付けられるようにしています。
患者さまのプラークコントロールがうまく行われていて、それでも歯周ポケットが深い場合には歯周外科治療が必要です。
基本治療で歯周ポケットが浅くならない場合には、歯周外科治療を行います。歯周外科治療では、歯肉を切開して、歯根を露出させて切開しないと届かない部分にたまった歯石や汚れをきれいに除去します。
歯肉で隠れていた奥深くの歯石や汚れを除去し、きれいになったことを確認できるため、細菌を確実に除去することができます。歯周外科治療を行うことで、歯周ポケットが浅くなり、プラークコントロールのためのセルフケアも楽になります。
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